井上靖/闘牛

夙川公園・西宮球場・北口周辺

猟銃 井上靖

あらすじ:

やり手の新聞記者であった津上は、人員整理の為に設立された夕刊紙の編輯局長として任命される。どこか投げやりで虚ろな孤独の影を背負っている彼は、社運をかけた闘牛大会開催のために奔走する。それはどうにもならない関係を続けている愛人さき子との関係を賭け、自分たちの人生を賭けるごとくである。 第22回芥川賞(1949年下半期)受賞作。

作品より引用

さき子は阪神球場に津上を訪ねて行った。今に雪でも舞い落ちて来そうな、薄ら陽の、寒い日の午後だった。西宮北口で電車を降りた。いつも電車からは見ているが、その巨大な円形のスタジアムの近代的な建物の中に入って行くのはさき子はこの日が初めてであった。人気のないがらんとした建物の空洞を突当って左手に折れると、建物の大きさにはひどく不似合いな船室のようなちいさな事務所があった。

出典:『猟銃・闘牛』 1966年10月 新潮社
初出:「文學界」 1949年12月 10号

井上靖と西宮のかかわり>

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