瀬戸内晴美/恋川

三浦座(浄瑠璃の劇場)、その周辺の料亭

あらすじ:

文楽の世界へ九歳で入門し、後に人間国宝まで上り詰めた二代目桐竹紋十郎の人生と、彼を取り巻く多くの女達との間に流れた恋の川が、文楽の舞台の様に辛く悲しく、情熱的に描かれている。徳島の阿波に育ち、人形浄瑠璃に親近感を抱いていた作者が、文楽の世界と女のさがを美しく描いた作品。多くの読者がこの作品に出会い、文楽の世界に興味を抱いたという、日本の古典的芸能に興味を抱かせる入門書としてもお勧めの一冊である。

作品より引用

西宮の酒問屋に、無類の人形芝居の好きな主人がいて、とうとう道楽が凝って、三浦座という一座を設けた。その時、文五郎たちが招かれて、西宮まで応援にいったことがある。  興行が終ってから、酒問屋の主人は大阪から駈けつけてくれた文五郎たちを土地の料亭に招待した。小文も師匠のお伴でその時はお座敷につれていってもらった。

出典:『恋川』 昭和50年 角川書店 より
初出

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