西宮ヨットハーバー (南西部)
あらすじ:
ジムのインストラクターをしている30歳目前の女性、青豆。DVなどで女性を苦しめる男たちを暗殺する仕事を引き受けているが、1984年4月にそれまでの世界とは微妙に違う「1Q84年」に入り込む。予備校で数学を教える傍ら小説家を目指す天吾もまた1Q84年の世界に入り込み、「ふかえり」という少女が書いた小説のリライトをすることになる。
青豆と天吾は、実は10歳の時に、ともに孤独な境遇にあり、放課後の教室で手を握り見つめあったことがあるが、その後別れ別れになり、20年間お互いの消息も知らないままそれぞれの人生を歩んでいた。2つの月が出る1Q84年の世界で、二人は、宗教団体「さきがけ」に関わる事件に巻き込まれて行く。
青豆と天吾、二人に接近する「さきがけ」の弁護士、牛河の登場により、再びめぐりあうことができた二人は、手を取り合って元の世界に移動する。月が一つしか空に浮かんでいない世界に。本来彼らがいるはずの場所に。
作品より引用
男はヨットの話をした。彼は西宮のヨットハーバーに自分の小さなヨットを係留していた。休日になるとそのヨットで海に出る。海の上で一人で身体に風を感じるのがどれくらい素敵なことか、男は熱心に話した。青豆はろくでもないヨットの話なんて聞きたくもなかった。
出典:「1Q84」新潮社
初出:BOOK1、BOOK2 2009年5月29日
BOOK3 2010年4月16日