西宮中央商店街
あらすじ:
語り手の朋子は、母親の事情で岡山から芦屋の親類のお屋敷に預けられた。
そのお屋敷には、ミーナと呼ばれるハーフの美少女がいた。
ミーナは、病弱で、年齢よりは幼くみえるが、想像力豊かな読書家だった。
ミーナが芦屋のお屋敷町で有名なのは、ペットのコビトカバに乗って小学校に通学していたからだった。
朋子は、すぐにミーナと親友同士になる。
朋子の憧れである伯父さんの家族たちは、みな個性的で、ミーナと暮らす芦屋のお屋敷での生活は、まるでおとぎ話のような楽しさだった。
朋子とミーナは、思春期前期の危うげな時期を、一家の暖かいまなざしに守られて過ごしていき、やがて別れの日を迎える。
けれど、二人の心の結びつきは、大人になっても、変わりなく続いていくのだった。
作品より引用
芦屋に来て三日目の土曜日、伯父さんと一緒に西宮の洋品店へ中学校の制服を作りに行った。
私が入学するのは芦屋市立Y中学校なのに、どうしてそんな遠くのお店へ行くのか不思議だったが、西宮は私の想像よりもずっと近かった。
芦屋川沿いの道を南下し、高速道路の下の国道を五分も走らないうちに、たちまち西宮市になってしまった。》 (「ミーナの行進」p32)
出典:『ミーナの行進』2009年6月 中公文庫
初出:2006年4月25日 中央公論新社刊