金子光晴/流浪

西宮戎、西宮港

あらすじ:

自伝的作品。若い養母に育てられ、早くに性に目覚め、反抗と放蕩を繰り返した後、森三千代と結婚する金子。だが、三千代は、他の男と恋に落ちる。金子は生活の困窮と三角関係という状況を打開するため、ヨーロッパ行きを三千代にもちかけ、ほとんど目算の立たない旅に出かけ、数々の強烈な体験をする。だが、長い旅から帰ってきた日本こそが「異国」だった。アジア、ヨーロッパ紀行の態をとりながら人生という「流浪」を描いている 。

作品より引用

兵庫県東南部西の宮に辿りついた。西の宮戎の社のあるところだ。 そこがその旅の終着駅となったのは、私の実妹が、結婚して、関西大学を教えることになった夫の河野密と二人で、そこで小さな家庭をもっていたからである。(中略) 私は、戎社や、和船ばかりが帆柱の林をつくっている港のほうをひとりでほっつきあるき、『水の流浪』にのせたような、うらぶれた詩をつくりためた。「新造船」「古靴店」のような詩は、そのときの収穫である。

出典:『流浪 金子光晴エッセイ・コレクション』2006年 株式会社筑摩書房刊 より
初出:金子光晴全集第7巻(1975年刊)収録「どくろ杯」(中央公論社 1971年刊)(中公文庫 1976年刊)

金子光晴と西宮のかかわり>

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