貴志祐介/十三番目の人格(ペルソナ)ーISORA-

武庫川女子大学甲子園会館

十三番目の人格(ペルソナ)ーISORA- 貴志祐介

あらすじ:

エンパス(他人の感情を読みとれる能力者)である賀茂由香里は、阪神大震災のあと、西宮市内の病院で心のケアのボランティア活動をしていた。活動の中で由香里は、長期入院中の森谷千尋という多重人格障害の少女に出会う。千尋は由香里に少しずつ心を開き、千尋の複数の人格が由香里の目の前に次々と姿を現すのだった。
しかし、由香里は、千尋の周囲になにか不穏なものを感じ、千尋の高校のカウンセラー・野村浩子の協力を求めた。
調査を進めるうち、由香里は、震災のときに起きた怪事件と、千尋との隠れた関係に気づく。その裏には、千尋の十三番目の人格「ISOLA」が関わっていた。
「ISOLA」とは、一体何者なのか?
謎を追う由香里の身にも危険が迫っていた。

作品より引用

《私立晨光学院高校は、兵庫県の尼崎市と西宮市の間を割って大阪湾に注ぐ武庫川べりにあった。正門のグリルは黒塗りの鋳鉄で、大学と見まがうような銀杏並木が続いている。建物はすべて、美しい焦げ茶色の化粧煉瓦でできており、いかにも有名進学校らしい重厚なイメージを作り出すことに成功していた。ざっと見渡した限りでは、大震災による被害も、ほとんどなかったようだった。》
(「十三番目の人格(ペルソナ)ーISORA-」p55)
《タクシーは、夙川まで西に進み、それから県道大沢ー西宮線を北上していった。やたらにたくさんのトラックが行き来している。急勾配の坂を上って高台に着くと、県道を真っ二つに割る形で、木や草がおい茂った小山のようなものがあるのが目についた。
その前には、『?左へ』という黄色い標識と、『スピード落とせ』という小さな立て看板が立てられている。
まるで、中央分離帯が癌化して、異様に膨れ上がったというような感じの代物だった。
こんなものがあるために、前後に長い安全地帯を設けなくてはならず、明らかに交通の邪魔になっている。
由香里が「あれ、古墳か何かですか?」とたずねると、小太りで赤ら顔のタクシーの運転手は、「あれは、夫婦岩ですわ」と答えた。》
(「十三番目の人格(ペルソナ)ーISORA-」p221~222)

出典:『十三番目の人格(ペルソナ)ーISORA-』 平成8年4月 角川ホラー文庫
初出:平成8年4月25日初版刊行 角川書店

貴志祐介と西宮のかかわり>

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