増山実/勇者たちへの伝言

西宮北口駅近辺

あらすじ:

「うちらの人生も、この線路みたいに、ほんの一瞬、この街で交わったんやね」
戦後の混乱期、高度成長時代、そして今。
3つの時代が、今はもうない西宮球場を舞台に重なりあう――ちょうどかつての鉄道名所だった、西宮北口駅の線路が直角に交わるダイヤモンドクロスのように。
主人公であり語り部であるベテラン放送作家の父とその父が球場で出会った気丈な乙女との悲恋を描く。
バルボン、高井などの実名の元阪急ブレーブスの選手取材も織り交ぜながら、立体的にかつてそこにあった西宮の物語を紡いでいく。

作品より引用

目の前には、阪急神戸線と今津線のレールが直角に交差しているのが見えた。電車の交差点や。ほら、耳を澄ましてみい。この店からも、電車が交差点をガタガタと走る音が聞こえるやろ。
ふたりの会話が途絶えたとき、安子は、珍しくしんみりとつぶやいた。
うちらの人生も、この線路みたいに、ほんの一瞬、この街で交わったんやね……。

あの西宮球場の、巨大なジオラマだった。
ジオラマは球場だけでなく、西宮北口駅を含んだ周辺の街も再現していた。あの球場が、そのまま、ここに残っていた。父と一緒に観戦した一塁側スタンドも、俊足のウインディが駆け回ったレフトも、そして、父と歩いた、あの街並みも。

出典:『勇者たちへの伝言』2013年12月 角川春樹事務所
初出

増山実と西宮のかかわり>

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