宮本輝/青が散る

甲子園・香櫨園

あらすじ:

目的なく入学した新設大学。そこで燎平が出会ったのは、恋とテニスだった。青春というモラトリアム時代を生きる青年の迷いと苦しみを描いた小説。

作品より引用

春が訪れたような陽気だった。阪神電車の香櫨園駅に降りると、先に来ていた金子が改札口のところで手を振った。海が近くにあり、絶えず浜風が吹いているところだったが、珍しく風もなく、小さなつぼみをつけた川ぞいの桜並木には、コートを脱いだ若い男女が数組枯れ草の上に腰を降ろして、うららかな陽光を浴びていた。  ふたりは住宅街を海のほうに向かって十五分ほど歩いた。クラブハウスの屋根が見え、ボールを打つ音が聞こえてきた。香櫨園ローンテニスクラブは、阪神間では最も大きなテニスクラブで、コート数も二十数面あって、夏にはインカレの舞台にもなる名門クラブだった。

出典:『宮本輝全集 第3巻』 1992年6月 新潮社
初出:「別冊文藝春秋」1978年9月(145号)、1978年12月(146号)、1980年3月(151号)~1982年10月(161号)

宮本輝と西宮のかかわり>

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