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あらすじ:
主人公泰子は、16歳の誕生日に父から、亡くなった母からの手紙を手渡される。
そこには母が16歳になった時の話から始まり、青春の日々が綴られていた。英語劇で出会った西は、過激派グループに加わり飛行機をハイジャックし、射殺される。トシは詐欺の男に騙され、勤め先の銀行からお金を着服し刑務所へ。泰子はスチュワーデスになり、母の青春時代と自分の青春とを重ね合わせながら、美しいこととは何であり、善いこととは何であるかを考えさせられていく。それぞれが必死に生き、青春という浜辺で砂の城を築こうとしていった。
作品より引用
駅の案内看板をみて母の実家がかつてあった甲東園が西宮北口で乗りかえることを知った。 ウイーク・デイだったけれども意外に混んでいた。十月の秋晴れの日を利用して紅葉を見に行くらしい客も眼についた。西宮北口から宝塚に向う阪急の支線に乗りかえる。
車窓から母の手紙に書いてあった甲山が見えた。なるほどまるい甲を思わせる形をしている。その山の下は切りひらかれてビル群のように白い団地が拡がっていた。甲東園の駅でおり、彼女は駅前の菓子屋に入って、「恩智病院はどこでしょうか」とたずねた。
出典:「砂の城」 1979年12月 新潮社
初出:「砂の城」 1976年9月 主婦の友社